カール・F・ヴィスロフ著、鍋谷堯爾・勝原忠明訳編『ルターとカルヴァン』いのちのことば社、1976年
概要
代表的宗教改革者であるルターとカルヴァンについて、その半生と歴史的背景を振り返りながら二人の神学を解説する。
目次
序章 宗教改革と日本の教会(勝原)
一 日本の教会と宗教改革との関係
二 問われている福音派の教会と神学
三 時代と人々
第一部 ルター
第一章 戦いの中での成長ー福音の再発見ー
一 ルターにおける「改革」の意味
二 自らの戦い、論敵との戦い
三 神秘主義とルター
四 唯名論とルター
第二章 みことばと教会
一 聖書のみ
二 みことばに立つ教会
三 みことばに仕える者ー教職ー
第三章 恵みの手段
一 聖礼典について
二 聖餐の恵み
三 キリストによる贖いの確かさ
第四章 律法と福音ールター神学のかなめー
一 律法・神の怒り・悔改め
二 福音ーよきおとずれー
三 罪赦された罪人ー義認と聖化ー
第五章 ルターの協力者メランヒトン
第二部 カルヴァン
第六章 予定の教理をめぐって
第七章 教会ーその本質と形態ー
第八章 聖礼典とキリスト論
終章 信仰告白とキリスト論
一 ルーテル教会の信仰告白
二 改革派教会の信仰告白
文献表
あとがき
おわりに
感想
二人の宗教改革者が置かれた歴史的背景について適宜書かれているので、二人の神学・信仰について多面的に学ぶことができる。
人間的に見ると、ルターは誤った教義から「聖なる公同の教会」を守ろうと孤独に戦った人で、カルヴァンは宗教改革がある程度進んだ中で、宗教改革の教会の組織の中で生きた人間に見える。
ルターがメランヒトンのような仲間とも、時に微妙な、時に大きな意見の不一致があったことは悲劇に思える。しかし、彼が置かれた状況を考えるなら、彼が妥協せず孤独を選ばざるを得なかったことは理解できる。
この点で、宗教改革者が結婚を始めたことは非常に大きかったのではないか。
ルターはある面では孤独だったが、彼にはよき理解者である妻カタリナがいた。
神学書などではどうしても二人の神学の差異に目が行ってしまうが、この本は、
この本はカルヴァンの神学をルターの神学と比較するとき、人々は、違いの大きさに気をとられて、両者の間の相似点を見逃してしまう。実際は、似たところのほうが、異なったところよりも大きいのである。カルヴァンは、ルターが主張した宗教改革の三原則「信仰のみ」「恵みのみ」「聖書のみ」の上に立って、彼の宗教事業を推し進めた。また、カトリック教会に対しては、徹底して戦った。(p.158)
という視点で書かれている。
確かに二人には神学的な違いがあり、時にはそれは小さなものではないが、二人とも御言葉に堅く立つことを生涯貫いた。
宗教改革者たちの論争は御言葉に対する真剣さから生まれたものであり、特に福音主義/プロテスタント教会というものが確立されていなかった時代には避けて通れないものであった。
彼らの御言葉に対する真剣さが現代の福音主義諸教会の礎を築いたのである。
私も彼らと共に
草はしおれ、花は散る。しかし、私たちの神のことばは永遠に立つ。(イザヤ書40:8)
と告白する者でありたい。
by junstott