アモスってだれ・・・?
アモスは、ベツレヘム近くのテコア出身です。このテコアは、イエスが生まれるベツレヘムから南に10km、エルサレムから南16㎞の場所にあります。
ここからわかることは、アモスは南ユダ王国の出身だということです。彼は、南ユダ王国出身者として北イスラエル王国で活躍することになります。
また、アモスは「牧者」です。しかし、単に羊飼いというよりもしゅs多くの牧畜を所有している資産家であり、国際的な情勢や国内外の生活様式、イスラエルの人々の現状など様々な分野の知識に富んでいた人物と言われています。
アモスは、預言者ホセアと同様、ヤロブアム2世(BC793~753)の時代に、北イスラエル王国で活躍しました。実際に活動した期間は2年と短かったようでした。
当時の北イスラエル王国は、政治的に非常に繁栄していました。強国のアッシリアが他国との国境争いに専念していたのが大きな理由でした。
しかし、信仰的には非常に堕落していました。聖書の神様ではなく、バアルを始めとする他国の宗教に礼拝を捧げ、神様に背を向けた生活を送っていました。
現地の人々は、政治的な繁栄を、異教の神様への信仰と結び付けて、ますます異教の神様への信仰を強めていったようでした。
イスラエルと周辺諸国への裁きの宣告1~6章
アモスが強調した点の一つは「神様の正しさ」です。
イスラエル(北イスラエル王国、南ユダ王国)と周辺諸国(ダマスコ、ガザ、ツロ、エドム、アンモン、モアブ)が神様に対して罪を犯した故に裁きが下るという徹底した神様の正しさが語られています。
その中でもアモスは、北イスラエル王国の罪について詳しく言及しています。
主はこういわれる。「イスラエルの三つの背き、四つの背きのゆえに、わたしは彼らを顧みない。彼らが金刃引き換えに正しい者を売り、履き物一足のために貧しい者を売ったからだ。」アモス書2章6節
サマリヤの山にいるバシャンの雌牛どもよ。お前たちは弱い者を虐げ、貧しい者を迫害し、自分の主人に「何か持ってきて、飲ませよ」と言っている。アモス書4章1節
北イスラエルの富んでいる人々は、履き物一足のために貧しい人を売り、貧しい人々から不当なお金を搾取し、自分たちの生活のために、非情なことを平気で行ってました。
アモスはこの現状を何度も指摘します。そして、その大きな罪のゆえに北イスラエル王国を襲う裁きの預言、国の滅亡の預言、捕囚の預言をします。
アモスが見た5つの幻7章1節~9章10節
神様は、アモスに対して5つの幻を見せます。この幻は大きな罪を犯し続けているイスラエルへの裁きの計画の内容でした。5つの幻をまとめると次のようになります。
①イナゴの幻:イナゴの災害の預言⇒アモスの取りなしによって中止
②火の幻:火による災害の預言⇒アモスの取りなしによって中止
③重りなわの幻:イスラエルの正しさを測るための道具
④1かごの夏の果物(カイツ)の幻:イスラエルの終わり(ケーツ)の預言
⇒地震、日蝕、神の言葉の飢饉、干ばつ
⑤さばきの主の幻:祭壇の隣で破滅を宣言⇒祭壇は神様と人間の和解の象徴
④、⑤の預言は特に厳かさのある幻です。
神様は、イスラエルに対して、徹底的に災害、破滅の宣言をされました。
このことを通して、公義や正義がなされていない時に、神様によって何がもたらされるのか。そう言ったことを教えています。
希望の約束と新約聖書9章11~15節
アモスはイスラエルの人々に対して、神様の徹底的な裁きが下ると言ってきました。
しかし、この書は、それだけでは終わりません。
9章10節まで一貫して、神様の裁き、審判について言及されていましたが、9章11節からは驚くほど全く異なったことが書かれています。それは、2つの希望の約束です。
①ダビデ王朝の再興
②災害で失った農耕、牧畜の回復
特に、①のダビデ王朝の再興の約束は、イスラエルの人々にとって非常に喜ばしい約束でした。
しかもこの約束は、分裂した北イスラエル王国と南ユダが王国の統一王国としての約束でした。この言葉を聞いたイスラエルの人々は歓喜したのではないでしょうか。
その日、わたしは倒れているダビデの仮庵を起こす。その破れを繕い、その廃墟を起こし、昔の日のようにこれを建て直す。 アモス書9章11節
また、この箇所は新約聖書の使徒の働き15章16節でヤコブが引用しています。
その後、わたしは、倒れているダビデの仮庵を再び立て直す。その廃墟を建て直し、それを堅く建てる。それは、人々のうちの残りの者とわたしの名で呼ばれるすべての異邦人が、主を求めるようになるためだ。-むかしから知らされていたこと、それを行う主のことば 使徒の働き15章16~18節
この言葉が引用されたのは新約聖書の中でも重要な出来事においてでした。
ヤコブはこの箇所を引用し大胆に、異邦人に対しての救いが神様の御心にかなっているものだと主張しました。
また、キリスト教の人々は、①のダビデ王朝の再興の約束がイエスによって成就すると考えていて、いずれ来るイエスが究極的なダビデ王朝を建て直すことを期待しています。
まとめ
西満先生は、アモス書のメッセージの中心は、「公正を水のように、義を、絶えず流れる谷川のように、流れさせよ(5章24節)」の御言葉だと言っています。
アモスが預言した当時の北イスラエルの堕落した状態を見て、神様は様々な預言や幻を通して、裁きが来ることを伝えています。
しかし、神様はただ裁かれるだけでなく、「公正をみずのように、義を流れる谷川のように流れさせよ」というように、正しい道に戻るよう促し、最後には、希望の約束もされます。
アモスはこの神様の言葉を牧者として、教養と技巧を駆使して書きました。アモス書には、神様の言葉がより一層深まるような文学的技法などが多く使われています。
そういった一つ一つ綿密に書かれたこのアモス書は「公正を水のように、義を、絶えず流れる谷川のように、流れさせよ」という生き方を神様の裁きと恵みの約束からしっかりと受け取ることができます。
ぜひ、一度読んでみてください。
参考文献
わかりやすい旧約聖書の思想と概説「下」 西満著 絶版
新改訳2017 聖書
ティンデル聖書注解 ホセア書 デイヴィッド・アラン・ハバード著
ティンデル聖書注解 ヨエル書、アモス書 デイヴィッド・アラン・ハバード著